2025年を円滑に迎えるために、今から自治体職員が出来ること。(外字の同定作業について)
こんにちは。アクシス営業のケージです。
全国には、1747もの自治体があります(令和元年5月1日現在)。また国においては、自治体情報システムの標準化に関する「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」が、令和3年9月1日より施行されました。
また、令和3年6月に示された「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書【第1.0版】」では、自治体における作業手順が明記されています。(以下、手順書より抜粋)
フェーズ | 作業項目 |
---|---|
(1)計画立案フェーズ | ①推進体制の立ち上げ ②現行システムの概要調査 ア) 現行システム環境の基礎調査 イ) 連携一覧の作成 ③標準仕様との比較分析 ア) Fit & Gap分析 イ) 標準仕様書対応表への記載 ④移行計画作成 |
(2)システム選定フェーズ | ⑤ベンダに対する情報提供依頼(RFI)資料の作成 ⑥RFIの実施 ⑦RFI結果分析 ⑧予算要求 ⑨ベンダへ提案依頼(RFP)【ベンダを切り替える場合】 ⑩ベンダ選定・決定【ベンダを切り替える場合】 ⑪契約・移行計画の詳細化 ⑫特定個人情報保護評価(PIA) ア)評価の対象となる事務 イ)評価の実施手続き |
(3)移行フェーズ | ⑬システム移行時の設定 ⑭データ移行 ⑮テスト・研修 |
その手順書の中には、「早期に実施可能な作業項目」というものも示されています。
- 推進体制の立ち上げ
- 現行システムの概要調査
- 標準仕様との比較分析
- 移行計画作成
- ベンダに対する情報提供依頼(RFI)資料の作成
- RFIの実施
さらに、手順書の(3)移行フェーズにおける⑭データ移行の一部として、「文字情報基盤文字への対応」というものが記載されています。
「手順の通りやれば、いいんでしょ。分かりましたよ!」と、言いたくなる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、ちょっと待ってください。サラッと書かれている、この「文字情報基盤文字への対応」について、実は・・・トンデモなく大変な作業であることを解説したいと思います。
自治体情報システム標準化
「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」は、地方自治体の事務処理を共通化することにより、住民の利便性の向上を図り、地方自治体の行政運営の効率化の観点から、標準化の対象となる17の事務が定められています。
- 住民基本台帳
- 選挙人名簿管理
- 固定資産税
- 個人住民税
- 法人住民税
- 軽自動車税
- 国民健康保険
- 国民年金
- 障害者福祉
- 後期高齢者医療
- 介護保険
- 児童手当
- 生活保護
- 健康管理
- 就学(学齢簿)
- 児童扶養手当
- 子ども・子育て支援
以下の3業務が後に追加され、全部で20業務となりました。
- 戸籍
- 印鑑登録
- 戸籍の附票
また、上記の法律では、地方自治体へクラウドの活用を求めているほか、財政支援をすることも明記されています。(つまり、「国が用意する「ガバメントクラウド」に移行する自治体には、補助金を出すよ。」と言っています。)
国の考えるスケジュール
しかし、国では、すべての地方自治体の移行が完了するまで、補助金を出し続けるのか。というとそうでもありません。令和7年度末(2025年)までに移行が完了する団体までとしています。
地方自治体における情報システムの現状
冒頭に、「全国には1747の市区町村がある。」と書きましたが、その内部で稼働している情報システムは、1990年代の後半には2000種類もの業務システムが稼働していたそうです。現在は「自治体クラウド」などの取り組みにより、600種類ほどまでに集約されているそうです。それでも、全国の市区町村では、それぞれ独自にシステムを調達して、カスタマイズしながら運用している現状に変わりはないのです。
特に、「外字」といわれる、人の名前や地名に使われる特殊な文字に関しては、各市区町村で個別に管理されている現状にあります。
外字とは
ここで、外字について説明します。
外字とは、人の名前や地名などに使われる文字で、市販されているパソコンでは変換されない文字です。
例えば「佐藤さん」の「藤」という字の部首は「くさかんむり」ですが、この「くさかんむり」の部分が「++」になっているものが、外字といわれるものです。
なぜ、このような字が必要になるのか?と疑問を抱かれる方が、ほとんどと思われますが、自治体の内部では、「住民票に出力される文字は、戸籍と同じ文字にしなければならない。」という「鉄の掟」があるためです。戸籍システムと住民票のシステムはそれぞれ別のもので、戸籍システムで保有している文字数が圧倒的に多いので、住民票のシステムでは自治体ごとに、その都度「外字」を作ってきました。また、ベンダごとに文字の形も違うし、内部で処理される文字コードといわれるものもバラバラなため、自治体間の情報システムにおいては、「共通化」や「標準化」が進まず、大きな阻害要因となっており、自治体システムの「ラスボス」と言われています。
円滑に2025年度を迎えるために
さて、この「ラスボス」を退治するには、どうすれば良いのでしょうか。それは、この「ラスボス」こと「外字」を全国共通の文字情報基盤に統一すれば良いのです。
自治体の職員さんの作業は以下の通りです。
- 自分の自治体で保有している外字を確認する。
- 文字情報基盤文字である「IPAmj明朝フォント」をCITPC(文字情報基盤成果物は2020年8月に情報処理推進機構(IPA)から文字情報技術促進協議会(CITPC)へ移管)よりダウンロードし、庁内のパソコンにインストールする。
- 外字を1文字ずつ、IPAmj明朝フォント検索サイトから探し出して同定させる。
「3」の作業を外字の数だけ、繰り返すことになりますが、外字の数が多い自治体では、5,000文字もあると言われているので、自治体の職員さんは、この作業に膨大な時間と労力をかけて、「ラスボス」を退治することになります。
実際、弊社SEが何文字かトライしてみましたが、1文字に対して候補の文字を探し出すだけでもかなり大変でした。
なぜ、上記の作業が必要なのか。それは、国から出ている「住民記録システム標準仕様書【第2.0版】」において、
他システムに対し、住民記録データ(支援対象者管理データを含む)が連携(提供)できること。文字については、30.2(文字)で定義する文字情報基盤文字で提供できること。
「住民記録システム標準仕様書【第2.0版】」7.2.2 他業務照会【実装すべき機能】
とされていることから、標準準拠システムの移行に際し、文字情報基盤文字への文字データの移行が発生するためです。
しかし、この作業は今からできる作業です。標準準拠システムへ移行するまでに、同定作業を終えていれば、文字情報の移行はスムーズに移行できるものと思われます。
上の図は、弊社の文字同定サポートサービス「AI‐さらば外字くん」の画面イメージです。
弊社「AI‐さらば外字くん」は、自治体で使用している外字データをお預かりすれば、同定の候補となる文字を10文字選定して、お返しするサービスです。
候補の文字を探し出すのがあまりに大変だったので、グループ会社のジャパン・カレント社と共同で開発しました。
詳細は以下のリンクをご参照ください。
弊社プレスリリース:自治体DX支援サービス 「AI-さらば外字くん」 の提供開始
※:基本サービスは、AIによる自動選択で、変体仮名と記号を除く候補10文字の選定率は、90%程度です。
弊社のサービスが、自治体職員さんの大変な作業の一助になれば幸いです。
自治体職員のみなさん、標準準拠システムへの移行に向けて、今からできることを進めていきませんか。
本サービスの詳細
AI-さらば外字くん | 株式会社アクシス (f-axis.co.jp)
本サービスのお問い合わせ先
お問い合わせ | 株式会社アクシス (f-axis.co.jp)
関連コラム
2025年を円滑に迎えるために、今から自治体職員が出来ること。(その2) | 株式会社アクシス (f-axis.co.jp)
どうする?MJ+対応 ~自治体システム標準化における文字同定作業へのAI活用方法について~ | 株式会社アクシス (f-axis.co.jp)